公演評「ヅカメンズ‼︎」
宝塚を語る落語会「ヅカメンズ‼︎」
今年で3回目の繁昌亭公演。
過去2回とは全く異なる世の中の状況。
チケットは完売とはいえ、半分は空席。
しかしさすが繁昌亭、空席には師匠方のパネルが。
まるで上級生に見守られて行う新人公演だ。
知る人ぞ知るおなじみの出囃子で幕が開く。
生寿とらく次が登場しオープニングトーク。
時事ネタに宝塚を絡める独自の切り口。
「アベノマスクだか仮面のロマネスクだか知りませんけど」などと、久しぶりのライブの空気を楽しんでいる。
生寿が古典落語の宝塚アレンジ「秘伝書宝塚」。テンポ良くまとめる。
続いて、らく次の古典落語「桑名舟」。登場人物が人生の最後に芸を聴いてもらうという話。
コロナ禍によってパフォーマンスを観てもらえなくなった気持ちを込めたネタ選びだろう。
休憩を挟み、お目当ての梅咲衣舞の落語。華やかで軽やかな口調が心地良い。
終盤、思いも寄らぬフレーズを入れ、会場をひっくり返し、梅咲衣舞にしか出来ない「平林」が誕生。
正座をして語る姿の美しさ。タカラジェンヌのプライドと花組娘役のマインドが詰まっていた。
その後、鼎談。梅咲に落語を教え、本番を舞台袖で見守っていた生寿の安堵と興奮に共感する。宝塚と落語界の共通点の話から、次第に、再開が決まった花組公演や、気になる若手男役の話に。
らく次はご贔屓について話を振られると、舞台上である事を忘れ、ポンコツと化すのは相変わらずのようだ。
トークコーナーの後は、らく次の宝塚アレンジ落語「おうちがタカラヅカ」。このネーミングは「おうちで〜」のオマージュであろう。2016年、場所は新世界の動楽亭。らく次が初めて大阪で演じた落語がこのネタだ。なんと彼の大阪初落語は宝塚ネタだったのだ。その時とはかなり演出やセリフの変更が見られる。「魚民 宝塚花の道店」はどうしても言いたいらしい。
トリは生寿の「質屋芝居」。宝塚を語る落語会ヅカメンズ‼︎だからこそ、無難で楽な道を選ばない、落語家としての矜持を感じた。
繁昌亭再開初日の夜席、開催が許された事、その場にいられた事を幸せに思う。
翌日はツギハギ荘にて「お茶飲み会」昼夜二回公演。
「お茶会」ではなく「お茶飲み会」というところに、狂気じみたこだわりを感じる。
まずは司会役の生寿が登場し、主旨を説明、その後、らく次を招き入れて、エアサンテ、形だけの乾杯をし、昨夜の熱狂と興奮の振り返りから座談のスタート。
小さなスペースだからこそ、換気を徹底し、風通りをよくしているが、トークの内容は密の密、濃密であった。おそらく彼らは舞台を降りたらもっとガラパゴスな話をしているのだろう。
ここで豪華景品が当たるジャンケン大会で、ビッグサプライズ。昨夜のプリンセス梅咲衣舞がまさかの登場。
彼ら二人には申し訳ないが、本当に来て良かったと思った。生きていて良かったと思った。
貴重なトークを存分に楽しみ、休憩を挟んで、おまけのような彼らの落語。生寿の「寿限無」と、らく次の「看板のピン」。良い意味で、肩の力が抜けていた。
夜の部も、梅咲は特出。彼らは本当に幸せ者だ。
「落語を聞きに来た」という梅咲がいるからか、二人は、落語の演目を昼の部とは変えた。生寿は「手水廻し」、らく次は「紙入れ」。
らく次は、男と女を描いたこの「紙入れ」という落語を、柴田侑宏先生の演出で、と言っていた。それを理解し、笑ってくださるお客様。
彼らは本当に素敵なお客様に恵まれている。
益々、芸の道に精進すべし。
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