公演評「ヅカメンズ‼︎」
宝塚を語る落語会「ヅカメンズ‼︎」
雪組公演千穐楽翌日に開催されると聞いた時に「無茶をするなぁ」と思ったが、梅咲衣舞の誕生日と聞いて納得した。実に運命的なスケジュールである。
急な坂に息を切らし、会場に向かった。
ロビーに飾られた梅咲へのお花が生誕祭ムードを高める。
配布された(自分で取った)パンフレット「落語」誌の表紙のデザインが、今までの公演のものと異なっていて面白い。巨大な歴史へのオマージュだろう。
らく次の開演アナウンスにお客席から「やってるやってる」という微笑がもれる。らく次が二つ目に昇進したばかりの頃、普通の落語会で同じ事をやって場内をポカンとさせていた事を思うと、とても良い雰囲気である。
わずか60秒ほどのオープニングVTRが効果的。らく次、生寿が登場しご挨拶トーク。昨日の今日なだけに、ネタの鮮度が高く、美味だ。
一席目は生寿の「ヅカ丁稚」。彼の「ロミジュリ」と「ヴェローナ」への想いが込もっていた。いつもより声に艶がある。原作は古典落語「蔵丁稚」。彼が口演する「蔵丁稚」も皆様におすすめしたい。今回の「ヅカ丁稚」はBパターンらしいが、何パターンあるのだろうか。
続いて、お目当ての梅咲衣舞の登場。袴姿で座布団に座る姿が可憐だ。テンポ良く語り、オリジナルのギャグも入れる。抜群のセンスの良さ。何より落語への敬意を感じる。さすが花組の娘役だ。前回「全ての宝塚ファンに聴いてもらいたい」と書いたが「全ての宝塚ファンと落語ファンに聴いてもらいたい」と改める。
仲入り(休憩)を挟み、3人揃ってトーク。3人揃ってのおしゃべりは今回で3回目なだけに、萎縮や緊張といった壁はないようだ。本筋と脱線のバランスも良い。やはりこういうトークはライブに限る。抱腹絶倒であった。
最後はらく次の落語。彼の「宮戸川」はおそらく10年くらい前に聴いたが、今回は後半部分を創作し、新しい形の「宝塚落語」を披露した。創作した後半部分にもっと肉付けがされると、独立した落語になるかもしれない。
前半、登場人物がぼそっと言った「ほんとの子供じゃないのかしら」は伏線だったようだ。
落語と宝塚、落語家とタカラジェンヌのコラボレーション。異なるジャンルを結びつけたのは「宝塚の魅力を共有したい」「宝塚の素晴らしさを伝えたい」という、ヅカメンズ‼︎の3人の純粋な「宝塚愛」であろう。
そして、梅咲の「最高のお誕生日になりました」という言葉に、会場が幸せいっぱいに包まれた。
次回、大阪公演は、ゲストに林家花丸を迎える。上方の一部の落語家に宝塚の魅力を広めたパイオニアであると同時に、落語の腕はピカイチの実力者だ。らく次、生寿の奮闘に期待したい。
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